完璧主義を直したいと思う人へ・失敗を恐れて動けない理由
「こんなことも知らないの?と思われたらどうしよう」
本当はやってみたいことがある。
興味のある仕事もあるし、新しいことを学びたい気持ちもある。
それなのに、いざ一歩を踏み出そうとすると、
「失敗したら恥ずかしい」
「できない人だと思われたくない」
「頭が悪いと思われたらどうしよう」
そんな気持ちが出てきて、動けなくなってしまう。
そして結局、
「もう少し勉強してから」
「ちゃんとできるようになってから」
「今はまだタイミングじゃない」
と先延ばしにする。
そのあとで、
「どうして私はこんなに意志が弱いんだろう」
「もっと努力すればいいだけなのに」
「いい歳をして、こんな自分が恥ずかしい」
と、自分を責める。
もしあなたにも思い当たるところがあるなら、ひとつ知っておいてほしいことがあります。
あなたに足りないのは、努力ではないのかもしれません。
むしろ、
「失敗しないため」に、ずっと頑張ってきたのかもしれないのです。
完璧主義なのに「努力できない」と感じるのはなぜ?
完璧主義というと、
何事にも手を抜かず、100点を目指して努力する人。
そんなイメージがあるかもしれません。
でも、完璧主義の表れ方はそれだけではありません。
「うまくできそうにないなら、やらない」
という形で現れることもあります。
たとえば、興味のある仕事を見つけたとします。
「やってみたい」
最初はそう思ったのに、
「漢字を読み間違えたらどうしよう」
「計算を間違えたら恥ずかしい」
「知らないことを質問して、そんなことも知らないの?と思われたら……」
そんな想像が始まる。
すると、
やってみたい気持ちよりも、
「恥をかきたくない」
という気持ちのほうが大きくなります。
そして、
「もう少し勉強してからにしよう」
と挑戦を先送りします。
ところが、先延ばしにした自分を見て、
「私は努力できない」
「やっぱり私はダメだ」
と、さらに自信をなくしてしまう。
つまり、
自信がないから挑戦できないのではなく、挑戦を避けることで「やっぱり私はできない」という感覚が強くなっている場合もあるのです。
実際、心理学の研究でも、完璧主義と「先延ばし」の関係が調べられています。
490人を対象に複数時点で調査した研究では、ネガティブな完璧主義と先延ばしとの関係に、「失敗への恐れ」などが関わっていることが報告されています。
つまり、
「完璧にやりたいから行動する」とは限らず、「失敗したくないから動けなくなる」ということも起こり得るのです。
別の研究でも、不適応的な完璧主義と、行動としての先延ばしとの関連が報告されています。
ですから、
「やらなければいけないのに動けない」
「私は努力できない人間だ」
と、すぐに意志の弱さの問題にしてしまう必要はありません。
その行動の手前に、
「失敗したらどうしよう」という不安が隠れていないか。
こちらを確認することも大切なのです。
本当に怖いのは「失敗」でしょうか?
ここで、少し考えてみてください。
あなたが失敗したとします。
それの「何が」怖いのでしょうか。
仕事で漢字を読み間違えること?
計算を間違えること?
質問に答えられないこと?
もちろん、それ自体が嫌なこともあるでしょう。
でも、もう一段深く見ていくと、
「頭が悪いと思われる」
「仕事ができないと思われる」
「バカにされる」
「恥ずかしい」
こちらのほうが怖い人もいます。
つまり、
失敗そのものより、「失敗した自分がどう評価されるか」を恐れている場合があるのです。
完璧主義と失敗への恐れを調べた研究でも、「ミスをすることへの強い懸念」と、失敗したときに恥ずかしい思いをすることへの恐れとの関連が報告されています。
もちろん、すべての完璧主義の人が同じ心理を持っているわけではありません。
だからこそ、
「私は失敗が怖い」
で止めず、
「失敗したら、私は何を感じるのが怖いのだろう?」
と、もう一段深く自分に問いかけてみることが大切です。
ここには大きな違いがあります。
計算が苦手なら、練習できます。
知らない漢字があるなら、調べればいい。
知らない知識は、これから学ぶことができます。
けれど、
「知らない私は恥ずかしい」
「できない私は価値が低い」
という前提を持っていると、
学ぶ前に「知らない自分を見せる」という関門が待っています。
だから苦しいのです。
頑張り屋さんが抱えている痛みは「疲れること」だけではない
私はこれまで多くの方のお話を伺ってきましたが、頑張れる人ほど、自分に厳しい基準を持っていることがあります。
仕事ができる私。
ちゃんとしている私。
人に迷惑をかけない私。
期待に応えられる私。
人から認めてもらえる私。
もちろん、向上心を持つことは悪いことではありません。
問題になるのは、
「そうでない自分には価値がない」
というところまで結びついている場合です。
すると、失敗は単なる失敗ではなくなります。
仕事を間違えた。
ただそれだけの出来事が、
「私は仕事ができない人間だ」
になってしまう。
知らないことがあった。
ただそれだけなのに、
「私は頭が悪い」
になってしまう。
人から指摘された。
それだけなのに、
「私は認めてもらえない」
と感じてしまう。
出来事と、自分の価値がくっついてしまうのです。
だから、失敗が必要以上に怖くなることがあります。
「もっと自信を持とう」で変われない理由
こういうとき、
「もっと自信を持てばいい」
「失敗したって大丈夫」
「完璧じゃなくていいんだよ」
と言われることがあります。
もちろん、間違った言葉ではありません。
けれど、それで簡単に変われるなら、すでに変わっているはずです。
頭では、
「完璧じゃなくてもいい」
と分かっている。
でも実際に人前に出ると怖い。
失敗しそうになると逃げたくなる。
ここに、自分を理解するための大切なポイントがあります。
必要なのは、
「完璧じゃなくてもいい」と何度も言い聞かせることだけではなく、
「私は、完璧でなかったら何が起こると思っているのだろう?」
と、自分の中にある前提を確認することです。
完璧主義を手放す前に、こんな質問をしてみてください
ノートやスマートフォンのメモを開いて、次の質問に答えてみてください。
質問1
「これがうまくできなかったら、人から何と思われそうですか?」
たとえば、
「仕事ができないと思われる」
「頭が悪いと思われる」
などです。
次に、
質問2
「そう思われることの、何がそんなに嫌なのでしょう?」
「バカにされたくない」
「嫌われたくない」
「見下されたくない」
という答えが出てくるかもしれません。
そして、もう一つ。
質問3
「もし本当にそう思われたら、自分について何を証明したことになると感じますか?」
ここがとても大切です。
たとえば、
漢字を読み間違える
↓
頭が悪いと思われる
↓
バカにされる
↓
恥ずかしい
↓
人より劣っている
↓
私は価値がない
こんな言葉が出てくる人もいるでしょう。
もちろん、誰もがこの答えになるわけではありません。
大切なのは、「正しい答え」を出すことではありません。
自分が無意識に何と何を結びつけているのかを知ることです。
私はこうした、自分でもまだ言葉にできていない前提を見つけていくことを「無意識の言語化®」と呼んでいます。
問題そのものよりも、
問題を苦しくしている「自分の中の前提」に気づく。
そこから変化が始まることがあります。
「60点でやりましょう」が苦しい人もいる
完璧主義について調べると、
「100点を目指さず60点でやりましょう」
というアドバイスを目にすることがあります。
これが役に立つ人もいます。
でも、60点の自分を人に見せること自体が怖い人にとっては、
「60点で出せばいい」
と言われても苦しいものです。
だから、私はその前に、
「60点の自分を見られたら、何が起こると思っている?」
と考えてみてほしいのです。
「評価が下がる」
と思っているのかもしれない。
「嫌われる」
かもしれない。
「能力がないことがバレる」
と思っているかもしれない。
その答えが分かると、
「私は完璧主義だからダメなんだ」
という漠然とした自己否定から、
「私は、能力がないと思われることをこんなに怖がっていたんだ」
という自己理解に変わります。
この違いは、とても大きいものです。
「知らない」と言える人は、そこから学べる
知らない。
分からない。
できない。
間違える。
私たちは、これらを悪いことのように扱ってしまいがちです。
でも、少し見方を変えてみましょう。
「知らない」ということは、
これから知ることができる場所を見つけた
ということでもあります。
「できない」は、
これから練習できる場所。
「間違えた」は、
次に修正できる場所です。
30歳でも、40歳でも、50歳でも同じです。
今まで知らなかったことは、今日から知ればいい。
苦手だったことは、必要な分だけ練習すればいい。
そして、全部できるようになる必要もありません。
今日から始められる、小さな練習
完璧主義を一気に直そうとしなくて大丈夫です。
むしろ、
「完璧主義を完璧に直そう」
とすると、また同じ苦しさが始まります。
ここでも参考になる研究があります。
完璧主義傾向の高い人を対象としたランダム化比較試験では、意図的に間違いを経験するエクスポージャーを含む介入が検討されています。
これは、
「絶対に失敗しない自分をつくる」
のではなく、
「失敗や間違いを経験しても、その後に対処できる」
という経験を重ねていく考え方とも重なります。
もちろん、日常生活で無理に大きな失敗をする必要はありません。
もっと小さなことからでいいのです。
「分からないので教えてください」
と一度言ってみる。
少し自信がないことでも、一度やってみる。
完璧に仕上がっていなくても、一度人に見せてみる。
そして間違えたら、
「間違えた=私はダメ」
ではなく、
「ここはまだ知らなかった」
と言葉にしてみる。
さらに一日の終わりに、
「今日できなかったこと」ではなく、
「今日、怖かったけれどやってみたこと」
を一つ書いてください。
自信は、何でもできる自分になってから生まれるものとは限りません。
できないことがあっても、
「じゃあ、ここからどうしよう」
と考えられる経験の積み重ねが、自分への信頼につながっていくことがあります。
あなたに必要なのは、もっと頑張ることではないのかもしれません
もし今まで、
「もっと努力しなければ」
「もっとちゃんとしなければ」
「こんなこともできない自分は恥ずかしい」
と自分を追い立ててきたのなら、
少しだけ問いを変えてみてください。
「どうして私は頑張れないんだろう?」
ではなく、
「私は、何をそんなに怖がっているんだろう?」
と。
もしかするとあなたは、怠けていたのではありません。
傷つかないように。
恥をかかないように。
否定されないように。
自分なりの方法で、自分を守り続けてきたのかもしれません。
だとすれば、必要なのは自分をさらに厳しく管理することではなく、
自分が何を怖がり、何を守ろうとしているのかを理解することです。
完璧な自分にならなくてもいい。
知らないことがある自分も、
失敗する自分も、
少し格好悪い自分も、
「ここから始めればいい」
と思えるようになったとき。
頑張る力は、
自分の価値を証明するための力から、自分の未来をつくる力へ変わっていきます。
人生が変わるほどの自己理解は、
「もっと立派な自分になること」から始まるのではありません。
今まで見たくなかった自分の気持ちを、
「そうだったんだね」
と知るところから始まるのです。
参考にした研究
・Negative perfectionism and procrastination: The mediating roles of fear of failure and indecisiveness
ネガティブな完璧主義、失敗への恐れ、先延ばしなどの関連を検討した研究。
・Perfectionism and procrastination in a clinical research sample
不適応的な完璧主義と行動上の先延ばしとの関連を検討した研究。
・Perfectionism and fear of failure: an examination of the 2 × 2 model of perfectionism
完璧主義と、失敗に伴う恥や困惑などへの恐れとの関連を検討した研究。
・Randomized controlled trial examining exposure to mistakes in individuals with elevated perfectionism
完璧主義傾向の高い人を対象に、意図的に間違いを経験する方法を含む介入を検討した研究。
※心理学研究で示される傾向が、すべての人にそのまま当てはまるわけではありません。この記事では研究知見を参考にしながら、自分自身の考え方や感情を理解するための一つの視点として紹介しています。
田中よしこ
株式会社コレット代表/マインドトレーナー
情報経営イノベーション大学 客員教授
「無意識の言語化®」を用いたセッションを提供。セッション歴14年、累計8,000件以上。著書4冊。
