こころと向き合うということ ― カウンセリングの基本
メンタルヘルスや心のケアへの関心は、近年かつてないほど高まっています。
仕事や人間関係、社会の変化のスピードの中で、
ストレスや不安を日常的に抱えている方は少なくありません。
心の悩みは、特別な誰かだけのものではありません。
心身の不調として現れることもあれば、
「このままの生き方でいいのだろうか」という問いとして現れることもあります。
カウンセリングは、病気を治療するためだけのものではなく、
より自分らしく生きるための支援として広く受け入れられるようになってきました。
つらい、苦しいと感じたときに誰かの力を借りることは、弱さではありません。
自分自身のこころと真剣に向き合おうとする、勇気のあらわれです。
対話を通じて自分の内面を見つめていくと、
感情の動きや行動のパターン、過去の出来事が今の自分に与えている影響に気づくことがあります。
その気づきが、これまでとは違う選択をする出発点になります。
このページでは、人がカウンセリングを求める理由、相談先の選び方、
カウンセリングの基本的な流れ、アダルト・チルドレンの生きづらさ、
そしてコーチングとカウンセリングの違いについて、順にご紹介します。
なぜ人はカウンセリングを求めるのか
カウンセリングを訪れる方の悩みはさまざまです。
はっきりとした症状がある場合もあれば、言葉にしにくいもやもやとした違和感の場合もあります。
不安やストレス、気分の落ち込み
悩みは誰にでもあるものです。けれど、そのつらさが日常生活に影を落とし、
一人で抱えるのが苦しくなったときは、誰かの力を借りるタイミングかもしれません。
相談のきっかけとして多いのは、続く不安や強いストレス、気分の落ち込みです。
うつ病や不安障害など医療的な治療が必要な状態のこともあれば、
そこまでではない心身の不調として感じられていることもあります。
対話の中で、つらい感情がどのように生まれているのかを理解していくと、
「自分にはどうにもできない」と感じていたものとの付き合い方が少しずつ変わっていきます。
人間関係の悩み
人間関係の悩みは、相談の理由として最も多いものの一つです。
親子関係の葛藤、夫婦関係のすれ違い、恋人や友人との間で繰り返される問題、
職場での対立やハラスメントは、こころを深く疲れさせます。
こうした悩みの背景には、コミュニケーションの癖や、相手に対する無意識の期待、
過去から持ち越している感情が隠れていることがあります。
それに気づくことで、関係の結び方そのものが変わっていくことがあります。
自己肯定感の低さ
「自分なんて価値がない」という感覚は、多くの悩みの根底に共通するテーマです。
挑戦する意欲を弱め、人生の選択肢を狭めてしまうことがあります。
この感覚は、幼い頃の経験、特に親との関係の中で身につけたものの見方と
つながっていることがあります。
自分を否定する考え方のパターンとその由来に気づいていくことが、
ありのままの自分を受け入れていく第一歩になります。
環境への不適応
職場の環境や文化になじめず、強いストレスから休職に至ったり、
復職に不安を感じたりするケースも少なくありません。
学校では、不登校という形で現れることもあります。
背景には本人の性格だけでなく、発達特性などが関わっている場合もあります。
自分の特性を理解し、環境との付き合い方を見つけていくことが、
頑張りすぎて疲れたこころを休め、再び歩き出す力になります。
トラウマ
トラウマとは、こころが受け止めきれないほどの出来事によって残った傷のことです。
一度の強い体験だけでなく、長く続いたいじめや家庭内での不適切な養育などの経験も、
深いトラウマ反応につながることがあります。
フラッシュバックや悪夢だけでなく、人への不信感や自己肯定感の低さ、
感情のコントロールの難しさなど、生き方全体に影響することもあります。
症状が強い場合は、トラウマケアを専門とする医療機関や専門家への相談をおすすめします。
愛着の問題
幼い頃に、身近な大人との間で安心できる関係を築きにくかった経験は、
大人になってからの人間関係に影響することがあります。
見捨てられる不安が強くなったり、人と親しくなることを避けたり、
感情の波に大きく揺さぶられたりして、生きづらさを感じる場面が増えることがあります。
安心できる関係の中で自分を見つめ直していくことが、
自分自身との関係、そして人との関係を結び直すきっかけになります。
表面の悩みの奥にあるもの
自分の弱さや苦しさを誰かに打ち明けるには、勇気が必要です。
だからこそ、相談先を探したり予約をしたりするその一歩は、
自分を大切にしようとする意思のあらわれです。
そして、心の悩みは単独で存在しているとは限りません。
たとえば「職場のストレス」として語られる悩みの奥に、
自分を責め続ける考え方や、昔から繰り返している人間関係のパターンが
隠れていることがあります。
8,000件以上のセッションを重ねてきた中で感じるのは、
最初に話される悩みは「入口」であることが多い、ということです。
その奥で、自分では当たり前すぎて気づけない「こうしなければ」という前提が
今の選択に影響していることがあります。
その前提を言葉にできると、同じ出来事に対しても、これまでとは違う選び方ができるようになります。
相談先の選び方
こころの悩みを誰かに話そうと決めたとき、
次に迷うのが「どこに相談すればいいのか」ということです。
相談先にはいくつかの種類があり、それぞれ役割が異なります。
医療機関(精神科・心療内科)
精神科や心療内科では、医師が診察を行い、必要に応じて診断や薬の処方を行います。
心療内科は、ストレスなどが体の症状として現れている場合を主に扱う診療科です。
眠れない、食べられない、日常生活に支障が出ている、
強い落ち込みや不安が続いているといった場合は、まず医療機関を受診してください。
医療による治療と、対話による心理的な支援を組み合わせることで、
より安定した回復につながることもあります。
カウンセリング・コーチングなど対話による支援
カウンセリングやコーチングは、対話を通じて自分の気持ちや考え方、
行動のパターンを整理し、これからの選択を見つけていく支援です。
心理職の資格を持つ専門家や、独自の方法論と実績を持つ専門家など、
さまざまな背景を持つ人がこの仕事に携わっています。
相談先を選ぶときに大切なこと
相談先を選ぶときは、肩書きだけでなく、
その人がどんな考え方で、どんな実績を重ねてきたか、
そして実際に話してみて安心できるかどうかを確かめることが大切です。
カウンセリングの効果を左右する大きな要因の一つは、相談する人と支援する人との信頼関係だといわれています。
自分に合う相手が見つかるまで、何人かと話してみることをためらう必要はありません。
コレットでも、医療的な治療が必要と考えられる場合は、医療機関の受診をおすすめしています。
そのうえで、「なぜ自分はいつも同じ反応を繰り返してしまうのか」を根本から理解したい方には、
無意識の前提を言葉にしていくセッションがお役に立てると考えています。
カウンセリングの基本的な流れ
はじめてカウンセリングを受ける方にとって、
どのように進むのかは気になるところだと思います。
ここでは、一般的な枠組みと、その中心にある「関係性」についてご紹介します。
セッションの形
カウンセリングのセッションは、1回50分前後で行われることが一般的です。
対面のほか、近年はオンラインで受けられる場も増えています。
どの形であっても、周りに邪魔されず、プライバシーが守られた環境で話すことが基本です。
頻度は悩みの内容や目標によって異なり、週に1回、2週間に1回、月に1回など、
状況に合わせて決めていきます。
守秘義務
セッションで話した内容を外部に漏らさないことは、対話による支援の大前提です。
「何を話しても大丈夫」という安心があるからこそ、
人にはなかなか言えなかった気持ちを言葉にすることができます。
変化の土台になる「関係性」
カウンセリングの効果を左右するのは、特定の技法や理論よりも、
相談する人と支援する人の間に生まれる関係の質だといわれています。
この関係性の大切さを強く説いたのが、アメリカの心理学者カール・ロジャーズです。
ロジャーズが創始した来談者中心療法(パーソン・センタード・アプローチ)は、
技法よりも支援する側の「あり方」を重視し、今も多くのカウンセラーの基本姿勢となっています。
ロジャーズは、人が建設的に変化していくための条件として、
支援する側の三つの態度を挙げました。
無条件の肯定的配慮(受容)
相手を評価や条件をつけずに、一人の人としてありのままに受け止める姿勢です。
これによって相談する人は「何を話しても大丈夫だ」と感じ、自分の気持ちを恐れずに探っていけるようになります。
共感的理解
相手の内側の世界を、あたかも自分のことのように、
けれど「あたかも」という感覚は失わずに理解しようとする姿勢です。
「この人はわかってくれている」と感じられることが、孤独感をやわらげ、自己理解を深めます。
自己一致
支援する側が、専門家という仮面をかぶるのではなく、
一人の人として誠実でありのままでいることです。
この誠実さが、本物の信頼関係を育てます。
傾聴の力
これらの態度を伝える中心的な方法が「傾聴」です。
傾聴とは、ただ言葉を聞くことではなく、その言葉の奥にある気持ちや思いにまで注意を向け、
受け止め、理解しようとする積極的な関わりです。
深く聴いてもらう体験の中で、人は自分の気持ちを整理し、
自分自身で答えに気づいていく力を取り戻していきます。
心理検査について
医療機関や心理の専門機関では、対話に加えて心理検査が用いられることもあります。
目的はレッテルを貼ることではなく、自己理解を深めるための手がかりを得ることです。
ロールシャッハ・テスト
インクのしみが描かれたカードを見て、何に見えるかを答える検査です。
ものの見方や感情の扱い方など、パーソナリティを多面的に理解する手がかりになります。
風景構成法
精神科医の中井久夫が考案した描画法で、川や山などを順番に描き入れて一つの風景を完成させます。
言葉にしにくい気持ちを、絵という形で表現できるのが特徴です。
箱庭療法
砂の入った箱の中に、ミニチュアの人形や建物などを自由に置いて「庭」をつくる心理療法です。
WAIS(ウェクスラー成人知能検査)
言語理解やワーキングメモリーなど、複数の観点から認知の得意・不得意を把握する検査です。
TEG(東大式エゴグラム)
交流分析の考え方をもとに、心の5つの働きのバランスから性格傾向を見る質問紙検査です。
まとめ:対話という器
どのような技法も、安心して話せる関係の中で用いられてはじめて力を発揮します。
カウンセリングとは、症状を和らげるだけでなく、
自分の感情や行動のパターンを理解し、
自分の価値観に沿って選んでいける生き方へと移っていくプロセスでもあります。
こころの不調や生きづらさと向き合う道は、平坦ではないかもしれません。
それでも、信頼できる伴走者とともに自分の内側を見つめる時間は、
これまで知らなかった自分と出会うきっかけになります。
アダルト・チルドレンの「生きづらさ」と向き合う
機能不全家族の影響から、本来の自分を取り戻すために
「アダルト・チルドレン」という言葉を聞いたことがありますか?
子どもの頃に、安心できる居場所として十分に機能していない家庭で育ち、
大人になってもその影響から「生きづらさ」を感じている人のことを指す言葉です。
医学的な診断名ではなく、自分を理解するための一つの考え方です。
もしあなたが、
- 人に頼ることが苦手
- 自分の気持ちがわからない
- 自分に自信がない
- つい頑張りすぎてしまう
- 人間関係でいつも同じパターンを繰り返してしまう
といった悩みを抱えているなら、子どもの頃に身につけた生き方が、
今も影響しているのかもしれません。
その生きづらさは、背景にある前提に気づくことで、少しずつ変えていくことができます。
機能不全家族とは
機能不全家族とは、家族の本来の役割である「安心できる居場所」「安全な基地」が
うまく機能していない家族のことです。たとえば、次のような状況が挙げられます。
- 家族の誰かがアルコールや薬物、ギャンブルなどに依存している
- 家庭内暴力(DV)や虐待がある
- 親が心の問題を抱えている
- 親が過干渉、または逆にネグレクト(育児放棄)の状態にある
- 親が子どもに役割を押しつける(親の代わりに家事をする、親の愚痴を聞き続けるなど)
外から見ると「普通の家庭」に見えても、
気持ちを受け止めてもらえない、子どもの自主性が尊重されないといった状態が
続いていることもあります。
このような環境で育つと、子どもは自分の感情を抑えたり、
いつも周りの顔色をうかがったりするようになることがあります。
それが大人になって「生きづらさ」として現れることがあるのです。
なぜ生きづらさを感じるのか
子どもの頃にその環境を生き抜くために身につけた「生きるための知恵」が、
大人になってからは「心のブレーキ」として働いてしまうことがあるからです。
- 自己肯定感の低さ:ありのままの自分を受け入れてもらえなかった経験から、「自分には価値がない」と感じやすくなる
- 過剰な責任感:家族の問題まで背負ってきたために、人の問題まで自分の責任だと感じ、一人で抱え込みやすくなる
- 本音を言えない:親の機嫌を損ねないように気持ちを抑えてきたため、人間関係でも本音を言いにくくなる
- 境界線のあいまいさ:自分と他人の区別がつきにくく、人の期待に応えようとしすぎて疲れてしまう
家庭の中にある「暗黙のルール」
機能不全家族には、言葉にはされないけれど強く守られている「暗黙のルール」があることがあります。
- 話してはいけない:家庭内の問題について口にすることがタブーになり、子どもは自分の感じていることが間違っているのだと思い込むようになる
- こうあるべき:「一番でなければならない」「失敗は許されない」といった固いルールがあり、子どもは常に緊張し、自己表現を抑えるようになる
- なかったことにする:問題が存在しないかのようにふるまうことで、子どもは自分の感覚を信じられなくなる
- 人を信じない:予測できない環境の中で、親を含め人を信頼しないことを学び、大人になってからの関係づくりに影響することがある
見えにくい傷つき
子どもを傷つけるのは、目に見える暴力や暴言だけではありません。
気持ちや基本的なニーズに関心を向けてもらえないネグレクト、
子どもの人生のあらゆることを親が決めてしまう過干渉、
親が自分の寂しさや不満を満たすために子どもを相談相手やパートナーのように扱うことも、
子どもに大きな負担を背負わせることがあります。
子どもが演じる「役割」
不安定な家庭の中で、子どもは安心や安定を少しでも得るために、
無意識のうちに特定の「役割」を担うことがあると言われています。
これは性格ではなく、その環境を生き抜くための工夫です。
一人の子どもが、状況によって複数の役割を担うこともあります。
- ヒーロー(優等生):「自分がしっかりしていれば家族はうまくいく」と、成果を出して家族の誇りになろうとする。大人になっても完璧主義や、失敗への強い恐れとして残ることがある
- スケープゴート(問題児):問題行動によって「問題のある子」とされ、家族の不満のはけ口になる。行動の裏には「自分を見てほしい」という切実な思いが隠れていることがある
- ケアテイカー(世話役):家族の感情に敏感で、親や兄弟の世話をし、対立の仲裁役を担う。大人になっても、人の世話をすることでしか自分の価値を感じにくくなることがある
- ピエロ(道化役):冗談やおどけで家庭の緊張を和らげようとする。明るさの奥に不安や悲しみを抑え込んでいることがある
- ロスト・ワン(いない子):目立たないようにして争いから距離を置く。自分の欲求や感情は大切ではないと感じ、人と親しくなることや自分の意見を言うことが苦手になることがある
- イネイブラー(支え役):問題を抱える家族をかばい、後始末をすることで、結果的に問題が続く状態を支えてしまう
たとえば「成果は出しているのに満たされない」という方のお話を伺うと、
子どもの頃に身につけた「結果を出していれば大丈夫」という前提が、
大人になっても静かに働き続けていることがあります。
それは性格の欠点ではなく、その環境で必要だった選び方です。
その前提に気づけると、これからは「頑張るかどうか」を自分で選べるようになっていきます。
自己肯定感への影響
批判や無関心、「良い子でいれば愛してもらえる」という条件付きの愛情の中で育つと、
「ありのままの自分には価値がない」という感覚が心の奥に残ることがあります。
家庭の歪みを、自分自身の欠点として受け取ってしまうのです。
この感覚は、その後の経験の受け取り方にも影響します。
うまくいったことは「たまたま運がよかった」と感じ、
うまくいかなかったことは「やっぱり自分はダメだ」という証拠のように感じてしまうことがあります。
こころと体へのさまざまな影響
子どもの頃から続いた緊張や不安は、大人になってからも心身に影響することがあります。
慢性的な不安や気分の落ち込み、ストレスへの適応の難しさ、
食行動の乱れ、パニック発作、確認行為がやめられないといった状態、
アルコールやギャンブルなどへの依存との関連が指摘されることもあります。
また、原因のはっきりしない頭痛や腹痛、疲れやすさなど、
こころの痛みが体のサインとして現れることもあります。
これらの状態がある場合は、一人で抱え込まず、まず医療機関に相談してください。
トラウマの影響
ここでいうトラウマは、一度の衝撃的な出来事だけでなく、
家庭という閉じた環境で長く続いたストレスも含みます。
長期間くり返されたつらい経験は、自分の見方、感情の扱い方、人との関係など、
生き方の広い範囲に影響することがあります。
過去の記憶が今まさに起きているかのようによみがえる「フラッシュバック」に苦しむ方もいます。
トラウマの症状が強い場合は、専門の医療機関での治療が大切です。
人間関係で起こりやすいこと
共依存
人のために自分を犠牲にすることでしか自分の価値を感じられない関係のパターンです。
子どもの頃に世話役や支え役を担ってきた人は、大人になってから恋人や友人、
自分の子どもとの関係でも、同じパターンを繰り返すことがあります。
「助けたい」という思いの奥に、見捨てられることへの不安が隠れていることもあります。
親密さへの怖さ
愛情と痛みが結びついていた経験から、人と深く関わることに怖さを感じ、
親しくなりそうになると無意識に距離を取ってしまうことがあります。
いつも相手の顔色をうかがい、期待に応えることで拒絶を避けようとするため、
人間関係の中で心から安らげない状態が続くこともあります。
回復への道のり
1. 安心して話せる場所を見つける
まず大切なのは、あなたの話をありのままに、安全に聞いてもらえる場所を見つけることです。
誰にも言えなかった経験や気持ちを言葉にすることが、自分の感情に気づき、整理する第一歩になります。
2. 過去と今のつながりを理解する
なぜ今の自分がこのような反応をするのか、過去の経験と今の自分を結びつけて理解していきます。
「あの頃の自分が一生懸命生きてきた結果なんだ」と知ることで、
自分を責めるのではなく、過去の自分をいたわれるようになっていきます。
3. 自分を認める感覚を育てる
自分の魅力や強みを一つずつ見つけ、
「完璧でなくてもいい」「失敗しても大丈夫」という感覚を少しずつ取り戻していきます。
4. 自分を大切にした人間関係を築く
自分の気持ちを適切に伝えたり、相手との間に健全な境界線を引いたりできるようになると、
相手の顔色をうかがわない、楽な人間関係を築きやすくなります。
さまざまな心理的アプローチ
認知行動療法
「自分は何をやってもダメだ」といった、苦しさを生む考え方のクセに気づき、
それが事実に基づいているかを確かめながら、よりバランスの取れた考え方を練習していく方法です。
精神分析的アプローチ
幼い頃の親との関係から生まれた無意識の葛藤が、今の行動や人間関係にどう影響しているかを
対話を通じて探っていく方法です。
来談者中心療法
受容・共感・自己一致の姿勢に支えられた安心できる関係の中で、
相談する人が自らの力で自己理解と自己受容に向かっていくことを支える方法です。
家族療法
問題を一人の責任とせず、家族全体の関係のあり方として捉え、
コミュニケーションのパターンを変えていく方法です。
自助グループ
同じような経験を持つ仲間と体験を分かち合う場です。孤独感をやわらげ、回復への希望につながることがあります。
自分を取り戻していくプロセス
自分を認める感覚を内側から育てる
人の評価に左右されない、安定した自己肯定感を育てていくことが大切です。
自分の長所を認めること、失敗した自分を許すこと、
子どもの頃に得られなかった思いやりを、大人になった自分が自分にかけてあげること。
その積み重ねが、「自分には価値がある」という感覚を育てます。
自分の声を取り戻す
相手を尊重しながら、自分の気持ちや意見を正直に伝えられるようになることも大切な変化です。
「いいえ」と言う勇気を持ち、健全な境界線を引けるようになると、人間関係の負担は軽くなっていきます。
内なる子どもをいたわる
「つらかったね」「よく頑張ったね」と、過去の自分に優しい言葉をかけることも、
自分を責める内なる声を、自分を支える声に置き換えていく助けになります。
過去を消すのではなく、過去に支配されない生き方へ
過去を乗り越えるとは、忘れたり、傷が完全に消えたりすることではありません。
過去が、今の自分の選択を支配しなくなっていくことです。
アダルト・チルドレンとしての生きづらさは、あなたの性格や能力の問題ではありません。
それは、あなたが過酷な環境を生き抜くために身につけた、心の鎧です。
その鎧の存在に気づき、もう必要のないものから少しずつ下ろしていくことで、
本来のあなたらしい生き方を選べるようになっていきます。
もし今、生きづらさを感じているなら、一人で抱え込まずに相談してみてください。
その一歩が、これまでとは違う未来への入口になります。
カウンセリングとコーチング、どう違う?
「自分が変わりたい」と思ったとき、
カウンセリングとコーチングのどちらを選べばいいのか迷う方も多いと思います。
どちらも人の成長を支える対話ですが、役割は少し異なります。
料理にたとえると
コーチング(料理長と一緒にレシピを考える)
「おいしいオムライスを作りたい」という目標に向かって、
どんなレシピで、どんな手順で作るかを一緒に考えていくのがコーチングです。
コーチングは「未来志向」。「どうすればできるか」を一緒に考え、行動を後押しします。
カウンセリング(栄養士と体の状態を整える)
これまでの食生活の乱れや栄養バランスの崩れを振り返り、
どうすれば健康な体を取り戻せるかを一緒に考えていくのがカウンセリングです。
カウンセリングは、過去に何があり、なぜ今の状態になっているのかを理解し、
前に進むための心の土台を整えます。
心の土台を整え、未来へ進む
まずは、自分の心の声に耳を傾けることから始めます。
過去につまずいたこと、傷ついたこと、ずっと引っかかっていることを、
無理に解決しようとしなくても、言葉にして聞いてもらうだけで心は軽くなることがあります。
モヤモヤが整理されると、自分が本当に望んでいることが見えてきます。
心の土台が整ったら、次は未来に向かう段階です。
「事業をこの方向に育てたい」「セッションで本当に届けたいことを形にしたい」
「家族との関係をこう変えたい」といった目標を言葉にし、
そのために何をするかを具体的に決めて、一歩ずつ進んでいきます。
カウンセリングとコーチングは、どちらか一つだけを選ぶものではなく、
組み合わせることでより大きな変化につながることがあります。
目的と時間の焦点の違い
一般に、カウンセリングは苦しさや不調を抱えた状態から、
安定した状態へと回復していくことを支える関わりだと説明されます。
過去の出来事や経験を振り返りながら、今の悩みの背景を理解し、
つらい感情に寄り添い、整理していきます。
一方コーチングは、比較的安定した状態から、
より望む状態へと進んでいくことを支える関わりだと説明されます。
焦点は現在と未来にあり、本当に望むビジョンを描き、
それを実現するための行動を一緒に考えていきます。
違いはありますが、どちらも対話を通じて自分を深く知り、
より良い人生のために意識的な選択ができるようになることを目指している点は共通しています。
そして、どちらにおいても信頼関係が欠かせません。
関わり方の違い:傾聴と問いかけ
カウンセリングで最も大切にされるのは、深く、ていねいな傾聴です。
相手の言葉を評価したり、特定の方向に導いたりせず、ありのままに受け止めることで、
これまで抑えてきた本音や感情を安心して探っていけるようにします。
コーチングでも傾聴は大切ですが、特徴的なのは「問いかけ」の力です。
考えを広げ、思い込みに気づき、自分の中にある答えや可能性を引き出すために問いを用います。
答えを教えるティーチングやコンサルティングとは、この点が大きく異なります。
比較表
| 特徴 | カウンセリング | コーチング |
| 主な目的 | 心の不調やストレスを和らげ、安定を取り戻す | 目標の実現、パフォーマンスの向上、自己実現 |
| 時間の焦点 | 過去から現在へ。「なぜ」そうなったのかを理解する | 現在から未来へ。「どのように」実現するかを考える |
| 相談する人の状態 | 不安や落ち込み、もやもやを抱えていることが多い | 比較的安定していて、さらなる成長を望んでいる |
| 支援する人の姿勢 | 受容と共感を大切にする聴き手 | 行動と未来を後押しするパートナー |
| 中心的な問い | 「なぜそのように感じるのでしょうか?」 | 「何を実現したいですか?そのために何ができますか?」 |
支援の土台となる心理学の考え方
カール・ロジャーズと来談者中心療法
人には本来、自分を成長させようとする力が備わっているという、人間への深い信頼に立つ考え方です。
支援する人の役割は相手を「修理」することではなく、
相手が自ら成長していけるような関係を築くことだとしました。
この考え方は、カウンセリングだけでなくコーチングの信頼関係づくりの土台にもなっています。
認知行動療法
私たちの感情や行動は、出来事そのものよりも、その出来事をどう受け取るか(認知)によって
大きく左右されるという考え方に立つ方法です。
考え方のクセに気づいて見直すことや、少しずつ行動を増やしていくことを通じて、気分や状態の改善を目指します。
うつ病や不安障害などへの有効性が多くの研究で示されています。
アドラー心理学
人の行動を「原因」からではなく「目的」から理解しようとする考え方です。
「すべての悩みは対人関係の悩みである」という言葉でも知られ、
人とのつながりの中で所属感や貢献感を感じることを大切にします。
未来志向の考え方は、コーチングとの親和性が高いといわれています。
ゲシュタルト療法
「今、ここ」での気づきを大切にする心理療法です。
空の椅子に話したい相手や自分の一部を座らせて対話する「エンプティチェア」という技法が知られています。
フォーカシング
ロジャーズのもとで学んだユージン・ジェンドリンが体系化した方法で、
言葉になる前の、体で感じている漠然とした感覚に注意を向け、
それにぴったり合う言葉を探していくことで、内側から気づきが生まれるのを助けます。
産業カウンセリング
働く人と組織の間に立ち、職場の人間関係やストレスへの対応、
キャリアの相談、職場環境の改善などを支援する分野です。
コーチングで用いられる考え方
国際的な基準
コーチングの分野では、国際コーチング連盟(ICF)が倫理規定や
コーチに求められる能力の基準を定めており、業界の指針の一つとなっています。
GROWモデル
コーチングの対話を整理するための代表的な枠組みです。
Goal(本当に望む目標を明確にする)、Reality(現状を客観的に見る)、
Options(とれる選択肢を自由に広げる)、Will(何から始めるかを自分で決める)の
4つの段階で進めます。自分で決めた行動だからこそ、主体的に続けやすくなります。
NLP(神経言語プログラミング)
ミルトン・エリクソンやバージニア・サティア、フリッツ・パールズといった
セラピストのコミュニケーションを分析して体系化された手法です。
信頼関係(ラポール)の築き方や、出来事の意味づけを変える「リフレーミング」などが
コーチングの中で活用されています。
コーチングとティーチングの違い
ティーチングが「答えを教える」関わりだとすれば、
コーチングは「相手が自分の答えを見つけるのを支える」関わりです。
魚を与えるのではなく、釣り方を本人が身につけるのを支える、とたとえられることもあります。
過去の理解と未来の選択をつなぐ
実際の支援の現場では、カウンセリングかコーチングかという二択ではなく、
その人の状態に合わせて関わり方を柔軟に変えていくことが大切です。
未来の目標について話している途中で、過去の失敗からくる強い不安が出てきたときには、
いったんその気持ちを受け止め、ていねいに聴く。
気持ちが整理されたら、また未来に向けた対話に戻る。
過去の理解と未来の創造を、一つの流れとして扱っていくのです。
コレットの「無意識の言語化®」も、この考え方に立っています。
過去を癒すか、未来を目指すかのどちらかではなく、
今の選択に影響している無意識の前提を言葉にすることで、
過去の理解と、これからの選択を一つにつなげていきます。
自己実現という視点
心理学者アブラハム・マズローは、人の欲求を
生理的欲求、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認の欲求、自己実現の欲求という
5つの段階で示しました。
マズローによれば、自己実現している人は、現実をありのままに受け入れ、
自発的で、創造性に富み、深い人間関係を築けるといった特徴を持つとされます。
それは特定の目標を達成した「結果」というより、
自分の内側と深くつながり、自分らしく生きる中で自然に現れてくる「あり方」です。
どちらを選べばいい?
まず医療機関への相談をおすすめしたい場合
- 日常生活に支障が出るほどの強い不安や落ち込み、無気力が続いている
- つらい記憶がよみがえり、生活に影響している
- うつ病や不安障害などの診断を受けている、またはその可能性を感じている
- 原因のわからない体の不調が続いている
カウンセリングが向いている場合
- なぜいつも同じパターンで落ち込むのか、人間関係がうまくいかないのか、根本から理解したい
- 過去の経験が今の自分に影響していると感じ、整理したい
- まずは安心できる場所で気持ちを話したい
コーチングが向いている場合
- 事業やキャリア、仕事で具体的に実現したい目標がある
- 自分の強みや価値観を明確にし、それを活かして生きたい
- 考え方の枠を広げ、行動を変えていきたい
- 人生の転機に、自分が本当に望む方向を見つけたい
どちらを選ぶにしても、変化の大きな鍵になるのは、相談する人と支援する人との関係の質です。
心から信頼でき、安心して自分を話せる相手と出会うことが、変化への一番大切な一歩です。
広島・東京・オンラインで、あなたの「見えない前提」を一緒に言葉に
コレットでは、脳科学・心理学・原始仏典を土台にした「無意識の言語化®」で、
あなたを頑張らせ続けてきた「見えない前提」をひもとき、
本当に望む未来から選べる自分へと進むお手伝いをしています。
広島・東京のオフィス、またはオンラインで個別セッションを行っています。
「もっと自分のことを知りたい」「この繰り返しの理由に一度きちんと向き合ってみたい」と感じたら、
どうぞお気軽にご相談ください。


